慢性期医療とは- なぜ今社会で求められるのか -

超高齢社会において「治し支える」医療を

「急性期医療」とは患者さんの病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまでの時期の医療といえます。
一方、「慢性期医療」とは病態が治療によりある程度安定した状態に至ったが、医療が必要な状態が続いている時期の医療といえます。実際の症例をあげて説明をしましょう。

症例1:脳出血

脳出血のため救急搬送された患者さんが、血腫除去術を行い手術は成功した。術後、意識障害及び人工呼吸器による呼吸補助が長期化し気管切開を行った。ある程度病態は安定したが、その後も意識障害が続き人工呼吸管理も必要なため、引き続き医療が必要であった。
この患者さんの場合、脳出血発症から手術を経て気管切開を行った頃までが急性期医療、その後の医療が慢性期医療となります。

症例2:肺炎

肺炎のため救急搬送された患者さんが、抗菌薬療法を行い全身状態はある程度安定した。しかし、高齢のため摂食嚥下機能が低下しており経口摂取は不安定で高カロリー輸液が必要であった。また、喀痰が多いため頻回な喀痰吸引が必要であった。
この患者さんの場合、肺炎発症から抗菌薬療法を行いある程度病態が安定した頃までが急性期医療、その後の医療が慢性期医療となります。

今までは病気に罹患しても、急性期病院で患者さんを治療し「治す」ことで概ね退院ができていました。すなわち急性期医療で医療は完結していました。しかし、超高齢社会の現在では、慢性疾患をいくつも抱えながら生活せざるを得ない患者さんが増えてきたため、急性期医療で完結できず、慢性期医療から介護・福祉とも連携することが不可欠となってきたのです。「治し支える」ことへの転換が重要になってきたといえるでしょう。
急性期医療から慢性期医療へのシームレスな関係がなければ、その先の介護・福祉との連携も難しくなっていきます。
つまり、慢性期医療は、これからの超高齢社会において極めて重要な役割を担うことになるのです。